XTZ125 「ねこちやづけ」 キャブレター車の燃料コック操作について考える。

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記事内容2006年04月  最終更新2010年08月04日

燃料コックについて

 最近は排出ガス浄化の関係で二輪車にも燃料供給装置に燃料噴射(フュエル・インジェクション)を採用する車両が増加中である。
 これら燃料噴射式の車両には全く関係の無いのだが、燃料供給をキャブレターで行う車両のうちマニュアルシフト式の小排気量車にはたいていの場合燃料コックがある。
(エンジン吸気の負圧を利用した負圧コックを装備してコック操作を基本的に不要にしたり、電動ポンプや負圧ポンプ式の燃料供給システムでエンジン停止時には燃料が供給されないため燃料コック自体が不要な車種もあるが。)

 燃料噴射などといったハイテクや、燃料ポンプ、負圧コックなどといった贅沢な装備とは無縁なシンプルな我がXTZ125「ねこちやづけ」にはもちろん燃料コックが装備されている。

燃料の劣化について

 燃料供給システムがキャブレターの場合、燃料タンクから供給されたガソリンをキャブレターのフロート室に溜め、そこから霧吹きの原理でガソリンを吸い上げ、空気と混合してエンジンに送りこむわけだが、このフロート室内にあるジェット類等の材料に使われている真鍮(に含まれる銅など)がガソリン中の成分に悪影響を与え、フロート室内に長時間溜まっていた場合はガソリンが変質・劣化するそうだ。
 ガソリンが変質・劣化すると、新鮮なガソリンと比較して点火・燃焼しにくくなるため、当然ながら始動性も悪くなる。

 こうなってしまうと大多数のバイク乗りにとっては、たいへん困った状態となるわけで、このような事態を避けるために何らかの対策を取る必要が出てくる。

 「キャブレターをインジェクションに換える」、「真鍮を別の金属に換える」、とか「バイクそのものを換える」といった根本的な対策を取れる人は別として、一般的なキャブレター車に乗る良い子達はそれ以外の方法が必要になる。

エンジン停止前の燃料コックオフ操作

 そこで「ねこのす」では、ガソリンの劣化による始動困難を回避するため、「エンジン停止前燃料コックオフ」を励行している。その方法は、
 しばらく(2〜3日以上)使用を予定していない車両をエンジン停止する際には、キャブレターのフロート室が出来るだけ空になるよう、フロート室の容量と燃料消費量を計算して、前もって燃料コックをオフにするというもの。
 簡単に言うと「エンジン停止する数百メートル手前で燃料コックをオフにして走行する。」だけ。
 この「数百メートル手前」というのが、車両や運転の仕方で変わってくるが、大体の目安としてXTZ125だと500m位、GL500Cだと800m位、KSR80だと300m位で「ねこのす」では運用している。


 こうすることによってエンジン停止後のキャブレター内フロート室のガソリン残量を減らしておき、次回のエンジン再始動時に燃料コックをオンにすることで、ガソリンタンクからキャブレターのフロート室内に新鮮なガソリンを流入させ、この新鮮なガソリンによって始動も容易に行おうという算段。

 ネットでの情報では、多くのキャブレター装備のバイクについてしばしば「始動性が悪い!」とか「数日乗らないとバッテリーが上がるまでセルを回しても始動しない!」といった内容の報告があるが、これら情報の提供者はおそらく燃料コックの操作を全くしていないか、誤った使い方をしているのだろう。(根本的にジェット類が詰まっている等の不調は除く。)
 よくネットで始動性が悪いと言われるXTZ125とGL500Cであるが、「ねこのす」での始動性は大変良好である。
 ちなみにXTZ125は、平日はほぼ毎日酷使されているため、土日と年末年始・お盆等以外は長期休止という事は無いのであまり参考にならないが、出番の少ないGL500Cは、数ヶ月、場合によっては半年以上休止している場合もあるが、再始動は簡単に可能である。(ちなみにGL500Cは、夏場に燃料コックオフを忘れて燃料コックオンのまま二日間も放置すると、再始動が困難になることも確認しているので参考まで。)

お約束の注意事項

 くれぐれも燃料コックを操作する場合には自己責任において注意して実施されたい。
 燃料コックの操作に気を取られて前走車に追突したり、燃料コックオフが早すぎてガス欠になって転倒したりしてもねこのすでは責任は取れないので、実施する場合には安全に留意して自己責任において実施するように。

 燃料コックをオフにして走行すると、エンジンにとっては一時的に燃料が薄い状態となるので、それが原因でエンジン不調になってももちろん責任はとれない。 当然、こんな状態で全開走行などは控えるのが賢明だろう。

 最適な燃料コックをオフにする地点は自分で見つけるように。 「ねこのす」の場合は単に交差点や危険箇所を避けて燃料コックを操作しても問題の少ない地点を選んでいる結果でもある。
 なお、数日間乗らない程度ではフロート室を完全に空にする必要は無い。 フロート室のガソリンを少しでも消費しておけば、次回始動時の燃料コックオンで消費した分、新鮮なガソリンが流入する。
 「ねこのす」では1ケ月間以上乗る予定が無い長期保管の場合にはフロート室のドレンを抜いて完全に空にしている。

 それから再始動時に燃料コックをON(またはRES・PRI等)にするのを忘れて「エンジンがかからない!」といって焦らないように。

追記
 夏季に10日間以上、上記の燃料コックオフ法を実施して放置していたXTZ125が、次回エンジン再始動時には、燃料コックをオンにした後、セルを数秒回しただけで始動できる事を確認した。


(参考情報)
 燃料コックオフは再始動を容易にするため以外にも行っといた方が良い。
 キャブレター内のフロートやフロートバルブ等が何らかの理由により機能を果たさなくなったとき、ガソリンがキャブレターのフロート室からオーバーフローしてエンジン(シリンダー内)に流入し、シリンダー内がガソリン(この場合混合気ではなく、液体のガソリン)で充満し、再始動時にクランクが回転したため、シリンダー内のガソリンをピストンが圧縮しようとしてコンロッドが曲がってしまったバイクの例を聞いた事がある。
 ここまで酷くは無いが、「ねこのす」でもキャブレターからオーバーフローしたガソリンがシリンダーに流入し、更にはクランクケース内にまで落下し、エンジンオイルがガソリンと混ざっていたことがあった。
 これに気付かずにエンジンを始動したら、ガソリン流入によって増加したエンジンオイルが床面に噴出したので驚いた。
 本件の車種は内緒だが運が悪ければ引火してFからRR「ファイアーブレード」に進化していたかもしれない。
 引火しないにしても、ガソリンによって希釈されて粘度の落ちたオイルによってエンジンに悪影響を与える可能性もあった。
 今回は引火・爆発する事も無く、早期に発見できたため非常に幸運だったともいえる。
(ちなみに本件は、本来メインスイッチオフで燃料供給の止まる電気式の燃料ポンプを、とある理由から管理人が重力落下式に変更していたことが原因のひとつであり、この変更がなければ、このような事態も発生しなかった。 車両本体や車両製造者に問題がある訳ではないので誤解の無いように。)





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